更新日:2023年11月9日

肝がん

治療方針

ガイドライン(図1)や腫瘍の悪性度などを加味して治療方針を決定していきます。

肝癌診療ガイドライン(図1)

肝がん診療ガイドライン

治療法の大まかな選択イメージ(図2)

治療法の大まかな選択イメージ

  • 治療方針の決定には肝がんの腫瘍進行度と肝臓の予備能力が重要です。
  • 腫瘍の進行度とは別に生物学的悪性度も治療の成否に関わってきますが、ガイドラインには組み込まれていません。
  • 腫瘍マーカー(AFP、L3分画、PIVKA-II)が異常に高値の方や悪性度が高いと考えられる腫瘍形態(多結節癒合型など)は、内科的治療ではなく外科的治療が望ましい場合もあります。
  • 通常は肝がんの診断や拾い上げ検査には不適とされるFDG-PET/CTですが、肝がんの中でも異常な悪性度を示すものではFDGの集積がみられ、生物学的悪性度評価に有効なことも分かってきています。同時に無症状で重複する他臓器のがんも検出することで、治療成績の向上につながります。

当院では、肝がん診療に関わる内科・外科・放射線科が週1回集まり、治療を予定している症例、臨床上疑問が残る症例の経過や画像の検討、グレーゾーンに位置する症例の治療方針についての討論を行い、各科の長所を活かしながらより良い治療成績を目指しています。

肝がんについて

  • 肝原発性の肝がんと転移性肝がんの二通りあります。
  • 多くの肝がんはウィルス性肝炎・肝硬変やアルコール性肝硬変など肝疾患を背景に発生するため、定期的な画像検査により早期発見につとめることが重要です。最近では抗ウィルス治療の進歩と高齢化に伴い、脂肪肝が原因と思われる高齢の糖尿病患者さんからの発症も増えてきています(図3)。
  • 治療後も肝内の再発が多い病気です。
  • 肝臓の能力(肝予備能と表現します)を治療後も保つことは、生活や再発治療に大きく関わる非常に重要な要素です。
  • 腫瘍の「進行度」と同時に「肝予備能」が治療に大きな影響を与えます。

肝癌初発時の年齢(図3)

肝癌初発時の年齢

診断

(図4)

肝がんの診断

治療

物理的にがんの部分を取り除く以上に確実な治療はありません。ただし、手術が体に与える負担や、残った肝臓が小さくなることによる影響を十分に考慮する必要があります。がんの位置や大きさ、肝臓の状態を慎重に評価した上で適応を決定します。

手術のみで治療困難な場合は、内科と外科の協力により根治を目指します。

ラジオ波焼灼療法(RFA)

  • 基本的には大きさが3cm以下で数が3個以内の症例に行います。
  • 体外からエコーを見ながら、特別な治療用の針を腫瘍に刺して、熱で焼き固めます。
  • 体に対する負担が少ない利点がありますが、エコーで見えない場所や、大きな血管が近くにあると確実な治療は困難です。
  • 小さい腫瘍でも、悪性度が高いと判定した場合は、RFA後に再発が多いことがわかっており行いません。

肝切除

  • エコーで確認しながら手術を行うため確実に病変を切除できます。
  • 誰でも手術が可能なわけではありません。正常な肝臓では半分程度を切除しても問題ありませんが、肝機能が悪い人は少量の切除でも肝不全を起こして生命に関わることがあります。
  • 患者さんの肝機能と腫瘍を切除したあとの肝臓の大きさを天秤にかけて、手術が安全に行えるかを判定します。
  • 高度進行がんを除き、腹腔鏡(おなかの中を観察する内視鏡)を使って小さなキズで手術することが可能となってきています(腹腔鏡下肝切除)。

経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)

  • RFAや手術治療ができない場合に行います。
  • 肝臓に血液を送る動脈内にカテーテルという細い管を進めて、抗がん剤とともに動脈を一時的に詰めてしまう特殊な物質を流します。
  • 詰めた物質は通常は数ヶ月で洗い流されるため、繰り返し行う必要があります。

全身薬物療法

  • ネクサバール、レゴラフェニブ、レンバチニブ、ラムシルマブ、カボザンチニブという分子標的薬やアテゾリズマブ/ベバシズマブという免疫チェックポイント阻害薬と分子標的治療の組み合わせがあります。
  • TACEに反応の不良な方(不応)や不向きな方(不適)、肝臓以外の内臓(主に肺や骨)に転移が出た場合で、肝機能が良い人に限って使用されます。

当院の初診肝がんの診断状況、初回治療状況(図5)

当院の初診肝がんの診断状況、初回治療状況

定期的に経過観察している患者さんは早期発見(ステージI)で発見できる頻度が上がってきていますが、近年は先に示したように(図3)ウィルス性肝患以外からの発がんが増えてきており、定期的に肝がん検診を受けていないために進行した状態で発見される方の割合がゆるやかに高くなってきています。ウィルス性肝疾患以外の肝がんの拾い上げ検診の確立が今後の課題となっています。
一方で、抗ウィルス治療によって肝炎ウイルスがコントロールされるようになったことで肝予備能が保たれた患者さんの割合の増加もみられており、手術、RFAの割合が増加しています。

診療実績

肝がん全体(図6)

診療実績(肝がん全体)

2009年に分子標的治療が登場した、また2010年代にはC型肝炎治療薬が登場、そして積極的治療姿勢の結果として3期、4期の成績は有意な改善傾向が見られています。

肝予備能と進行度別でみた治療成績(図7)

肝予備能と進行度別でみた治療成績

肝予備能のよい早期肝がんの場合は、積極的治療(手術やRFA)で根治的治療を行うことができるため、非常に良好な治療成績が得られます。

当院での肝切除症例数(図8)

当院での肝切除症例数

当院の肝癌診療における臨床研究論文(多施設共同研究含む)と患者さんへのお知らせ

当施設の肝癌診療における治療成績論文

手術

  • 肝胆膵領域の専門医によるグループ診療
  • 年間約100例の肝切除術を施行
  • 大半の症例は腹腔鏡下手術が可能
腹腔鏡下肝切除術
腹腔鏡下肝切除術
ICG蛍光法
ICG蛍光法

院内がん登録データ

肝臓(2021年1月~12月)

登録数と男女割合

登録数と男女割合(肝臓)

年齢

年齢(肝臓)

詳細部位別登録数

 詳細部位別登録数(肝臓)

UICC TNM 肝細胞癌の治療前ステージ別登録<症例区分20~31(自施設責任症例)、病期分類対象のみ>

UICC TNM 肝細胞癌の治療前ステージ別登録

取扱い規約 肝細胞癌の治療前ステージ別登録<症例区分20~31(初回治療実施症例)、病期分類対象のみ>

取扱い規約 肝細胞癌の治療前ステージ別登録

UICC TNM 肝細胞癌の術後病理学的ステージ別登録<症例区分20~31(自施設責任症例)、病期分類対象のみ>

UICC TNM 肝細胞癌の術後病理学的ステージ別登録

取扱い規約 肝細胞癌の治療前ステージ別 治療の件数<症例区分20~31(自施設責任症例)、病期分類対象のみ、自施設で実施した初回治療のみ>

※件数は延べ件数。外科的治療と化学療法を組み合わせて行った場合には、どちらの項目でもカウントされる。

取扱い規約 肝細胞癌の治療前ステージ別 治療の件数 1期
取扱い規約 肝細胞癌の治療前ステージ別 治療の件数 2期
取扱い規約 肝細胞癌の治療前ステージ別 治療の件数 3期
取扱い規約 肝細胞癌の治療前ステージ別 治療の件数 4期

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