更新日:2022年7月15日

肝予備能力評価法について

肝予備能力評価法

肝臓がんの治療は他臓器がんと異なり、肝臓自体の予備能力は非常に重要な因子です。治療自体に制限がかかることがあります。たとえば、胃がんで胃を全て摘出することはできますが、肝臓がんではもちろん肝臓を全て摘出することは出来ません。術後に肝不全を来さないように十分な余力を残しつつ治療を行う必要があります。

従来、肝予備能評価においてChild-Pugh分類という指標が広く使用されてきました(図1)。近年、総ビリルビン、アルブミンという2種類の検査データのみを用いて統計学的に成立したALBI グレードという評価法が注目されています(図2)。ALBIグレードはChild-Pugh分類に比べて、手術、ラジオ波治療、肝動脈塞栓術、分子標的治療を含む全身薬物療法において治療成績予測(すなわち肝予備能力評価)に有用であったと報告されています。

分子標的治療薬の登場は大きな変化を肝癌の実臨床にもたらしました。3cm3個を超す「中期」肝がんにおいて繰り返すカテーテルによる肝動脈塞栓術(TACE)で効果が不良となった場合に、次々と登場している分子標的治療薬への適切な切り替えが治療成績向上に不可欠とされています。分子標的治療薬は肝予備能力が良好な方に使用できます。そのため繰り返す肝動脈塞栓術の経過中に肝予備能力の推移を鋭敏にとらえて、治療効果が上がらない症例(TACE「不応」)にTACEを行うことで予備能力が悪化する前に治療切り替えの是非を検討することが重要とされています。また最近では肝動脈塞栓術より先に全身薬物療法を検討した方が良い可能性がある症例(TACE「不適」)も存在していると提唱されるようになってきました。

Child-Pugh分類(図1)

Child-pughスコア 1 2 3
総ビルビリン(mg/dL) <2 2-3 >3
アルブミン(g/dL) >3.5 2.8-3.5 <2.8
プロトロンビン時間(%) >70 40-70 <40
腹水 なし 少量 中等量以上
肝性脳症 なし 軽度(Ⅰ,Ⅱ度) 時々昏睡(Ⅲ度以上)

Child-pugh分類

Child-Pugh分類の補足説明

世界で最も広く使用されてきた肝予備能力評価法。図のように5つの因子を用いてスコア化して、3段階評価を行います。
半定量でスコア化している点、アルブミンや腹水といった影響を及ぼしあう因子が両者含まれている点、腹水・肝性脳症といった画像や主観が入る項目が因子として使用されている点、統計的に成立したものでない点といった欠点も指摘されています。

ALBIグレード(図2)

ALBIスコア
(log10(17.1×血清ビリルビン値[mg/dL])×0.66) + (10×血清アルブミン値[g/dL]×-0.085)

矢印(肝予備能力評価法について)

ALBIグレード
Grade 1:2:3 = ≦-2.60:>-2.60 to ≦-1.39:>-1.39

ALBI scoreをアルブミンと総ビリルビンの2つの一般的な採血データでscoreを算出、
そのscoreによって3つのグレードに分類=スコア(grade)は低いほど、肝予備能力は良好
近年、統計学的に考案されたアルブミンと総ビリルビンのみで肝予備能力を評価する手法

ALBIグレードの補足説明

統計学的手法をもとに、わずか2つのアルブミン、総ビリルビンといった一般的な採血項目で予備能力評価ができる近年考案された肝予備能評価法です。
臨床的な有効性が世界各地から多数報告されるようになってきています。
連続した変数をもとにした分類であるため、任意のスコアをもとに3段階評価以上に細分化した評価が可能です。

近年、中間グレード(グレード2)のカバー範囲が広いため、統計学的に求められた値ALBIスコア -2.27で2つのサブグレードに分けて4段階評価(1, 2a, 2b, 3)としたmodified ALBI (mALBI)グレード※が提唱されて分子標的治療の分野で使用されました。
※Hiraoka A, Kumada T. Liver Cancer 2017/Liver Cancer 2019

「愛媛県中ALBI自動計算」ファイル

HCC診療・肝予備能評価にお使いください。

ALBI grade単独計算/経時的なALBI score変化グラフ表示機能つき(2019年2月8日更新版)

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