更新日:2021年3月25日
胆道がん
治療方針
当院での胆道がん治療は、日本肝胆膵外科学会 胆道がん診療ガイドラインに沿って行っています。
治療にあたっては、診療科間、スタッフ間での連携を重視しており、消化器外科、消化器内科、放射線科の各領域の専門医が診療を担当します。検査から診断、治療方針の決定、治療まで、どの科でも垣根なく患者さんに適した選択ができることが目標です。
また、かかりつけ病院との連絡、がんに関する悩み、 経済的問題などへの相談(がん相談支援センター)、セカンドオピニオンの希望にも対応しています。
診療の流れ
受診
- 体調不良、検診で異常
- かかりつけの先生から紹介
診察
- 消化器内科、外科
- 病状と必要な検査の説明
- 検査のスケジュール相談
- 放射線科へ検査の依頼
検査
- 外来でCTやMRI
- ERCPなど(入院が必要)
- 診療科間で方針を相談
治療
- 検査結果の説明
- 治療と予想される経過の説明
- 手術
- 抗がん剤や放射線治療
胆道がんについて
症状
がんができると、肝臓から十二指腸への胆汁の通り道が塞がれるため胆汁の逃げ道がなくなります。
- 胆汁が血液中にあふれ全身が黄色く変わります → 黄疸
- 尿中にも胆汁があふれ濃い色の尿になります → 褐色尿
- 便に胆汁が混ざらなくなり白っぽい便になります → 灰白色便
- 黄疸とともに皮膚がかゆくなります
- 食欲が低下します
血液検査
胆汁は肝臓で産生されるため、流れが停滞すると肝機能障害が出現します(AST、ALT、ALP、γ-GTPなどが上昇)。
特に胆道系酵素と呼ばれるALPが最初に上昇。ビリルビン値の上昇とともに黄疸が出現します。
胆道がんのできる場所
胆道とは胆汁が流れる経路で肝内から十二指腸まで連続していますが、ここでは肝外の胆管を扱い、肝内のものは肝臓がんの中で取り扱われます。がんのできる場所によって・肝外胆管がん(肝門部領域胆管がん ・遠位胆管がん )・胆嚢がん ・乳頭部がんに分けられ、治療法も変わってくるため慎重な検査が必要です。
診断
黄疸、褐色尿、灰白色便、食欲不振、全身掻痒感や血液検査での肝機能障害の発見により、胆道がんの疑いがある場合は、エコーやCT等による検査を実施します。
主な検査
治療
手術による治療
胆道がんの場所と進行度によって切除範囲が変わります。
- 肝臓に近い胆管では肝臓の約半分を含む大きな切除が必要な場合もある
- 早期の胆管がんでは場所によって胆管の切除のみ
- 下部の胆管では膵臓と十二指腸を含む広い範囲の切除が必要
- 胆嚢がんでは早期のものは胆嚢の摘出のみで十分だが、進行すると大きな肝切除と膵頭十二指腸切除が必要になることがある
手術後
- 手術後は通常2~3週間程度で退院。体力低下や食事がとれない場合は、患者さんに適した病院へ転院してじっくり療養も可能
- 抗がん剤などの追加治療が必要な場合は外来で治療
- 普段はご近所のかかりつけ医へ通院し、定期的に当院で血液検査やCTなどの検査を行うことも可能
進行がんや再発で手術できない場合
- 病状に応じた抗がん剤や放射線治療を選択し、基本的には通院で治療が可能
- 体力低下や副作用などの場合には入院することもある
- 無理な治療よりも症状をやわらげる治療(緩和ケア)が望ましい場合もある
- かかりつけの先生と連絡をとりながら、患者さんにとって良い選択肢をとる
- 正確な情報をお知らせしたうえで、ご本人やご家族の希望に沿えることが優先
抗がん剤による治療
- 腫瘍の増殖抑制が目的
- 肝臓などの遠隔転移など全身に広がった腫瘍に効果が期待できる
-生存期間の延長
-痛みや倦怠感などの身体症状をやわらげる - 腫瘍が消えてなくなることはまれ
- 副作用と効果のバランスを考えて行うことが重要
- 投与量や回数、薬剤の選択や組み合わせなど適切に調節
手術後の補助療法としての抗がん剤
手術で肉眼的にがんは取り切れたが、もとの腫瘍がある程度進行していると肉眼で見えない細胞が残っている可能性があります。
- 進行がんの手術後に抗がん剤を追加すると再発や転移が減少
- 進行度や年齢、体力などを考慮したうえで追加治療が推奨される
放射線および抗がん剤との併用による治療
- 周囲にひろがって切除できない腫瘍(局所進行)が対象
-病変の縮小、進行の抑制が目的
-神経や骨などへの浸潤による痛みをやわらげる - 腫瘍が消えてなくなることはまれ
- 一定の量を設定して限局した場所に照射
- 抗がん剤と組み合わせて行うこともある
- 手術できない状態から手術可能な状態に縮小することもある