更新日:2026年6月9日
経皮的心房中隔欠損閉鎖術
心房中隔欠損症(ASD)のカテーテル治療について
当院では、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の新基準に基づき、成人の心房中隔欠損症(Atrial Septal Defect: ASD)に対する経皮的カテーテル閉鎖術を行っています(日本心血管インターベンション治療学会:外部リンク)。この治療は、胸を切開せず、脚の付け根の血管から細い管(カテーテル)を挿入して欠損孔を閉鎖するもので、開胸術に比べて体への負担が少なく、回復も早いのが特徴です。また当院では、患者さんの状態に応じて3種類の閉鎖栓(デバイス)を使用できる体制を整えており、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療選択が可能です。さらに、生まれつきの先天性ASDだけでなく、カテーテル治療後などにできた医原性心房中隔欠損症(iASD)に対する閉鎖術にも対応しています。このページでは、成人ASDおよびiASDに対するカテーテル治療について、分かりやすくご説明します。
心房中隔欠損症とは
心房は左右に分かれており、「壁(心房中隔)」により仕切られています。心房中隔欠損症は、この壁(心房中隔)に穴(欠損孔)がある先天性の心疾患です。そのため、血液が本来と違う方向に流れてしまい、肺への血流が増加し、心臓や肺に負担がかかることがあります。疲れやすさ、息切れ、発育の遅れ、呼吸器感染症を繰り返すなどの症状がみられます。

カテーテル治療とは
カテーテル治療では、胸を切開せずに脚の付け根(大腿静脈)から細い管(カテーテル)を挿入し、欠損孔を「閉鎖栓」と呼ばれる器具でふさぐ治療を行います。治療はX線透視や心エコーを使って確認しながら行い、通常は全身麻酔あるいは局所麻酔下で行われます。
カテーテル治療の手順


閉鎖栓を適切な位置に配置します。




治療後は一定期間安静にし、のどの痛みが残ることもありますが数日で回復します。入院期間は通常数日で、退院後は血栓予防のための薬(アスピリンなど)を約6ヶ月服用します。
使用可能な閉鎖栓(デバイス)について
当院では、成人ASDに対し、欠損孔の大きさ、形状、周囲組織(リム)の状態に応じて、3種類の心房中隔欠損閉鎖栓を使用できる体制を整えています。各デバイスにはそれぞれ特徴があり、経食道心エコーや3D画像を用いた術前評価に基づいて、患者さんごとに最適なデバイスを選択します。複数のデバイスから選択できることで、より適切で安全性に配慮した治療が可能になります。
Amplatzer™ Septal Occluder
ニッケル・チタン合金(ナイチノール)製のメッシュ構造を持つ、最も長い使用実績を有するデバイスです。左右2枚のディスクと中央のウエストからなる形状で、幅広いサイズ展開(4~38mm)により、小さな欠損孔から比較的大きな欠損孔まで対応可能です。
主な特徴
- 長年使われている実績のある器具
- さまざまな大きさの欠損孔に対応可能
- しっかり固定できるタイプ
GORE® CARDIOFORM ASD Occluder
ナイチノール製ワイヤーフレームを、生体適合性に優れたePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)膜で被覆した、柔軟性の高いデバイスです。心房中隔の形状に沿ってしなやかに適合するため、周囲組織が薄い症例や解剖学的に複雑な症例にも適しています。
主な特徴
- しなやかで心房中隔の形状に適合しやすい
- ePTFE膜により金属露出面が少なく合併症(エロージョン)リスク低減が期待される
Figulla Flex II ASD Occluder
ナイチノール製二重ディスク構造を有し、左房側ディスクの中央ハブが低く設計されているため、心房中隔への追従性が高いことが特徴です。デリバリーシステムとの接続部が柔軟(Flex機構)であり、欠損孔に対して斜めからのアプローチにも適応しやすく、大きな欠損孔や多孔性欠損症例にも対応可能です。
主な特徴
- 柔軟性が高く、複雑な形の穴にも対応しやすい
- 大きな穴や複数の穴にも対応しやすい
- いずれのデバイスも本邦において薬事承認を取得しており、保険診療として治療を受けていただけます。デバイスの選択については、担当医が患者さんの病態を総合的に評価した上で、十分にご説明した上で決定いたします。
よくあるご質問
- Q1.
- 治療は痛みがありますか?
- A1.
- 治療は麻酔下で行われますので、基本的に治療中の痛みはありません。
- Q2.
- 入院期間はどのくらいでしょうか?
- A2.
- 通常は数日間です。
- Q3.
- 普通の生活に戻れるまでの時間は?
- A3.
- 退院後、医師の指示に従いながら徐々に日常生活に戻ることができます。
- Q4.
- 医療費はどのくらいかかりますか?
- A4.
- この治療は健康保険の適用となる治療です。さらに、高額療養費制度をご利用することにより費用の負担を少なくすることが可能です。入院時の食事負担や室料等自費分の費用は含みません。高額療養費制度について、詳しくは厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(外部リンク)をご覧ください。
- Q5.
- 詳しい話を聞きたいのですが?
- A5.
- 治療に関するご質問、お問い合わせは下記までご連絡ください。
愛媛県立中央病院 循環器内科 川村 豪
電話番号:089-947-1111
内容によっては担当医師に確認し、後日改めてご連絡差し上げる場合もございます。
医原性心房中隔欠損症(iASD)に対する閉鎖術について
医原性心房中隔欠損症(iASD)とは、カテーテル治療に伴い心房中隔に人為的に作成された穴(穿刺孔)が、治療後も残存・拡大してしまった状態を指します。
代表的な原因となる治療
- 経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip™ 等の M-TEER)
- 左心耳閉鎖術(WATCHMAN™ 等)
- 経カテーテル僧帽弁・三尖弁治療
- 心房細動に対するカテーテルアブレーション
医原性ASDが問題となる理由
上記の治療では、右房から左房へアクセスするために心房中隔に穿刺孔を作成しますが、治療に使用するデバイスが比較的大きいため、術後に欠損孔が自然に閉じず、左右短絡(シャント)が残存することがあります。このシャントが大きくなると、右心負荷の増加、肺高血圧の増悪、心不全症状の出現、低酸素血症、奇異性塞栓症のリスク上昇などを引き起こす可能性があります。
当院での対応
当院ではこのような医原性心房中隔欠損症(iASD)に対しても、先天性ASDと同様に、経皮的カテーテル閉鎖術を施行可能です。症状を有する方や、シャント量が多い方などで治療適応が検討されます。
- 治療適応の判断には、経胸壁心エコー図、経食道心エコー図、心臓カテーテル検査等による詳細な評価が必要です。成人ASDに対する治療体制に加え、iASDにも対応できることが当院の特徴の一つです。ご自身や身近な方が該当する可能性があり、症状や治療について相談を希望される場合は、上記お問い合わせ先までお気軽にご連絡ください



