更新日:2023年11月30日

形成外科・顎顔面外科

診療科の紹介・特色

中川 浩志
主任部長
中川 浩志
(なかがわ ひろし)

形成外科とは、先天性異常や後天性変形を形態的・機能的に修復再建する外科です。具体的には外傷(キズ)・熱傷(やけど)・皮膚腫瘍(できもの)・先天異常(生まれつきの異常)・後天性変形(成長してからの異常)・咬合不全(かみ合わせ・顔つき)・褥瘡(とこずれ)・糖尿病壊疽(足がくさる)などを扱っています。ただ、病気を治すだけでなく、心地よく日常生活が出来る状態(きれいな傷跡、機能の改善、下肢の糖尿病壊疽では、安易な切断を回避して可能な限り下肢を温存する方法)にまで治療目標を設定しております。

愛媛県中予を中心に、外傷、皮膚腫瘍、先天性異常、後天性変形について多くの施設よりご紹介をいただいています。特に、救命救急センターと連携しているため、顔面のキズ、指・腕の切断、顔面骨骨折、熱傷の治療は救急車による搬入が多く、愛媛県全域から、指の切断、広範囲熱傷や顔面骨骨折の紹介をいただいています。さらに総合周産期母子医療センターとともに、顔面や手に関する多くの先天性疾患患者の治療を積極的に進めており、この分野でも愛媛県全域をカバーしています。

患者さん自身の意志・決定により、社会生活を送ることが可能な状態にまで応援することが形成外科医の目標です。顔にある1つのキズを取りましても、患者さん一人一人が異なる思いを持っています。醜形・機能不全が社会から不利益な取り扱いをされ、患者さんの社会参画が制限され、社会に適応できないという循環に陥らないように治療することが形成外科医の役割です。この治療目的のために、十分なインフォームド・コンセントを実践し、手術法の選択も患者さんと話し合い、治療目的が共有されることが望ましいと考えています。したがって、患者さん自身も十分に学び、理解していただく必要があります。

当科は形成外科の標準レベル以上の治療を実践するため次の方針を取っています。

  1. 救命救急センターで専門医としてprimary careの実践(救命救急医療)
  2. 総合周産期母子医療センターと連携して、先天性疾患の治療を推進(新生児・小児医療)
  3. 創傷ケアセンターと連携して褥瘡、熱傷、下腿潰瘍などを扱う(他科、各職種とのチーム医療)
  4. 最先端技術の獲得とその評価(学会参加・発表・海外ボランティア活動)

対象疾患

外傷・熱傷・皮膚腫瘍・先天異常・後天性変形・咬合不全・褥瘡・下肢の壊疽や潰瘍が主なものですが、具体的には、「見た目におかしいな」と感じる疾患の多くを取り扱っています。

1.外傷の代表的な疾患

(1)手の外科(骨折・腱断裂・神経損傷・切断した指をつなげる再接着)

日常生活に多大な制限をもたらすため、機能的・整容的に充分な治療には専門医の診療を受ける必要があります。切断指は、適応や患者さんの希望があれば積極的に再接着をおこなっております。顕微鏡を用いて神経と血管を縫合するデリケートな手術操作と高度なテクニックが要求され、再接着が不可能な場合や不成功となった場合は、皮弁形成により形態を保つ手術や断端形成をせざるを得ないこともあります。時間を経た切断指では、足の指を手の指に移植し、見た目の改善や物がつかむ機能の回復が可能です。

(2)顔面外傷(顔面皮膚の損傷・骨折:鼻骨・頬骨・上顎・下顎骨)

交通事故や殴打・転倒による骨折・損傷、その他全ての顔面外傷を取り扱っています。綺麗に縫合するだけでなく、口・鼻や眼瞼などでは拘縮を来さないように、神経や涙管・唾液腺の損傷がある場合は再建も行います。大きな皮膚組織欠損に対しても、形態を重視した再建を行っています。また残ってしまった顔面神経麻痺、涙道損傷や顔面瘢痕に対しても形態的、機能的な再建を施行しています。頭蓋顎顔面における骨折に関しては、専門的に治療しています。集中治療を要する多発顔面骨骨折から、外来処置ですむ鼻骨骨折まで年間80例あまりの症例を扱っています。当科では、関連する歯科、眼科、耳鼻科、脳外科、矯正歯科などと積極的に連携し集学的チーム治療を行い、さらに、これまでの手術法では十分に確認できなかった骨折部を、内視鏡の使用により、より確実性・安全性の高い手術が可能となってきています。

(3)熱傷(初期治療より瘢痕まで、熱傷チームにて治療します)

日本熱傷学会熱傷専門医3名(熱傷認定研修施設)

受傷直後は熱傷専門医が熱傷チームを組み、救命からキズの閉鎖まで救命から機能を優先した治療が行なわれます。顔面、手、会陰部、関節部など特殊領域は形態的・機能的予後が初期治療に左右されるため、熱傷の専門的治療が必要です。初期治療だけでなく、熱傷の傷跡による醜形や機能障害も積極的に治療を進め熱傷関連の手術を熱傷専門医が行っています。

2.皮膚腫瘍(ほくろなど皮膚腫瘍・母斑・太田母斑・血管腫・悪性皮膚腫瘍)

日本形成外科学会皮膚腫瘍外科分野指導医2名

顔面の皮膚できものは専門医により丁寧に、目立たないように切除されます。太田母斑・茶あざのシミはレーザー治療が行なわれ、大きな血管腫は血流速度に対応した手術・硬化療法が選択されています。悪性皮膚腫瘍は確実な診断と最初の手術が重要です。当科は、高度な再建技術を保持しているため、確実性の高い切除とQOLに配慮した再建が同時に可能なことが強みで、診断・照射・化学療法・手術など他科とのチーム医療で治療されます。

3.先天異常の疾患

日本形成外科学会小児形成外科分野指導医2名

(1)唇裂・顎裂・口蓋裂(歯科・言語聴覚士・耳鼻咽喉科などとチーム医療が行なわれます)

「なんで私の子供が」と驚き、治療法や将来に対する不安などはご両親が抱く当然の気持ちです。病気を理解し、成長に合わせた治療計画を熟知していただき、その子、その子の心の発育を考えながら治療を進めます。

唇裂・顎裂は、日本では頻度の高い先天性疾患です。愛媛県では毎年約20名前後の割合で生まれてきます。唇の見かけと機能、鼻の形を正常に近づけることを目標とし、成長とともに起こる形の異常を目立たなくし、本人の精神的負担を軽減します。口唇、鼻の変形が目立つ患者さんは、年齢や心の発育を観察しながら修正をします。

口蓋裂では摂食障害・鼻咽腔閉鎖機能不全症状がみられ、正常言語の獲得と歯列や顎の発育を促し、より望ましい顔貌をめざします。手術後は、言語聴覚士による言語治療が必要となります。患者さんの唇・鼻・顔面骨の成長は生まれてから18歳まで続きます。この間に、唇・口蓋・顎裂・鼻形成・顔面骨の骨切りまでトータルに診察・手術ができる施設は多くありません。当科では、歯科医・言語聴覚士との連携のもと、全ての治療がスムーズに行なわれることが特徴で、質の高い結果を出しています。

(2)頭蓋変形(先天性頭蓋骨早期癒合症・クルーゾン氏病など)

頭の形の変形、目の周囲の変形がある患者さんに対して、脳外科とともに治療に当たります。

(3)面形態異常(小耳症・耳介変形・眼瞼下垂・鼻の形態異常・第一二鰓弓症候群など)

耳の作成・眼瞼の修正・下顎骨の延長など顔面発育障害を再建しております。

(4)手足の先天異常(生まれつきの多指症・合指症・裂手など)

手の異常は日本人に多い疾患のひとつです。見た目の改善とともに機能の回復を目指します。合指症は中指・環指間、足では第2・3趾間の癒合が多い傾向です。一般に1歳前後に分離術を行います。多指症のみられる部位は、手では親指、足では小趾に多く見られ、全体の90%を占めています。手術は1歳前後で行われ、特に手の多指症では過剰指を切除するだけではなく、機能を考慮した、使いやすい指を目指します。

(5)原発性または後天性のリンパ浮腫の治療

生まれつきや手術の後にリンパ浮腫が生じて手・足・陰部が浮腫になり、リンパ液の漏出・皮膚炎・動きが悪くなる方を対象に手術を主体とした治療を行います。

4.後天性変形の疾患

(1)瘢痕拘縮・ケロイド(外傷・熱傷後に生じる関節運動制限・見た目の悪い状態)

胸や耳のキズあとが急に増大して痛みや痒み、また、顔面や手足のキズが目立ち、引きつりが見られる患者さんがいます。目立つキズや引きつりは手術によりキズを分かり難くすることが可能です。専門医が動き易く、キズを少しでも目立たなくする方法で治療いたします。ケロイドは保存的治療が中心になります。

(2)がん治療後の変形(口唇癌・舌癌・食道癌・乳癌手術後・リンパ浮腫などの再建)

耳鼻科・外科・整形外科・外科により、がん治療された患者さんの変形に対して積極的に再建を行なっています。舌癌、歯肉癌、咽頭癌、食道癌、眼瞼癌、乳癌の癌自体を治癒しても、舌の短縮、歯牙欠損、ものが食べられない、発音しにくい、目が閉じられない、胸のひきつれのため服が合わない、リンパ浮腫のため足・手の腫大で痛みや臭いがするなど日常生活が制限され、人前にでることにためらいをもつ患者さんをよく見ます。形成外科では、この問題を解決するため、高度な手術手技を使用して再建を行って、社会復帰のお手伝いをしています。

(3)受け口などの変形(咬合不全・顔面非対称など)

かみ合わせが合わない、顔面が左右対象的でない、顔面のバランスが良くない、口を大きく開くと痛みや音がするなど顔面の機能、形態を扱う外科です。一番多く見られる患者さんは下顎骨が突出して(受け口)かみ合わせが良くない方です。歯科と、手術前、手術時、手術後と連携しながら、かみ合わせと顔貌の改善を目的に手術にて治します。当科では特に形態も重視しており、バランスの取れた顔を再現していきます。

(4)床ずれ・キズが治らない病変(糖尿病性壊疽・血管閉塞性壊疽・褥瘡など)

日本創傷外科学会専門医1名 日本褥瘡学会認定褥瘡医師1名

自分自身で体位変換が不可能な方・糖尿病の方などは皮膚に傷ができやすく、治らず進行して、骨髄炎まで起こして、全身状態が悪化することが多く見られます。糖尿病のコントロール・皮膚ケア・予防マット・リハビリなどで一定の効果が在りますが、進行する場合には、持続吸引療法や外科治療が必要となります。

(5)わきが・陥入爪

快適な生活を送るため、上記の手術も行なっております。

外来担当表

形成外科・顎顔面外科

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
午前 岡田 將誉 中川 浩志 土居 未歩 石野 憲太郎
午後 土居 未歩 石野 憲太郎 中川 浩志 岡田 將誉

施設認定

  • 日本形成外科学会基幹施設
  • 日本熱傷学会熱傷専門医認定研修施設
  • 日本手外科学会認定研修施設

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