更新日:2022年1月26日

MitraClip 経皮的僧帽弁クリップ術

新しい低侵襲治療MitraClip

僧帽弁閉鎖不全症とは

僧帽弁閉鎖不全症とは

心臓弁の一つである僧帽弁がうまく閉じなくなり、心臓の中で血液が逆流する病気が僧帽弁閉鎖不全症です。

心臓には4つ部屋(左右の心房と心室)があり、部屋の出口には4つの弁があります。そのうち僧帽弁は心臓の左心室と左心房の間に位置する弁で、左心室が大動脈に向けて血液を送り出す際に血液が左心房に逆戻りしないように開閉しています。僧帽弁がうまく閉じなくなり、左心房に血液が逆流する病気が僧帽弁閉鎖不全症です。進行すると息切れや動悸、倦怠感などの自覚症状が出現し、さらに悪化すると心不全を引き起こします。

僧帽弁閉鎖不全症には以下の二つのタイプがあります。

器質性(一次性)MR

僧帽弁自体の劣化や、僧帽弁と左心室をつないでいるヒモ(腱索)が、何らかの原因で切れるもしくは延長することで弁の接合部分に隙間ができて血液が逆流する病態です。

機能性(二次性)MR

僧帽弁自体には異常はありませんが、左心室や左房の拡大により弁が引っ張られ、弁の接合部分に隙間ができて血液が逆流する病態です。

正常
正常
器質性(一次性)MR
器質性(一次性)MR
機能性(二次性)MR
機能性(二次性)MR

MitraClipを用いた経皮的僧帽弁クリップ術

外科的手術の危険性が高い場合カテーテル手術の適応となります。

僧帽弁閉鎖不全症は外科手術が第一選択です。しかしながら、心臓の働きが弱い、ご高齢、他の合併症が多いなどの理由により、手術の危険性が高くなり、手術を断念しなければならない患者さんも少なくありません。MitraClip(マイトラクリップ)というカテーテルを用いた僧帽弁クリップ術は、体に対する負担が少ないため、手術の危険が高い患者さんでも治療可能です。

MitraClipを用いた経皮的僧帽弁クリップ術

MitraClipとは

当院は愛媛県内唯一の認定施設として、2019年1月から治療を開始しました。

1.経皮的僧帽弁クリップ術の実際

経皮的僧帽弁クリップ術はカテーテルを用いて僧帽弁の前尖と後尖をつなぎ合わせることにより、僧帽弁の逆流を減少させる治療法です。

治療は全身麻酔下に行われ、心臓超音波専門医による経食道心エコー検査を参照しながら手術を進めていきます。足の付け根からカテーテルを挿入し、右心房から心房中隔を通って左心房に進めて行きます。ガイドカテーテルからクリップのついたクリップデリバリーシステムを僧帽弁の適切な位置まで持っていき、クリップを留置します。逆流が残存している場合は、クリップを置き直すことが可能で、追加のクリップを留置することもできます。クリップを留置し終えたら、足の付け根の止血を行い治療が終了します。通常は術後数日で退院することができます。

治療法
治療法
治療法
治療法
治療法
治療法

説明動画

経皮的僧帽弁閉鎖不全修復術について(外部サイトを表示します)

2.どのような患者さんが経皮的僧帽弁クリップ術の適応になるか?

MitraClip
  • 中等度以上の自覚症状を伴った僧帽弁閉鎖不全症
  • 高齢や併存疾患のため、外科的手術が困難な患者さん
  • 解剖学的に僧帽弁がMitraClipに適した形態であること

3.経皮的僧帽弁クリップ術のメリットは?

経皮的僧帽弁クリップ術

(1)低侵襲(体への負担が少ない)

外科手術のように胸を切開せず、心臓を停止させる必要がありません。

(2)手術リスクの高い患者さんにも実施可能

御高齢や並存疾患のため、治療が行えない患者さんでも実施可能です。

(3)早期の社会復帰を実現

術後早期にリハビリを開始し、短期間での退院が可能です。

4.高度医療を可能にする愛媛県中ハートチーム

カテーテル専門循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士、放射線技師、理学療法士等を含めた多職種からなる「ハートチーム」が、それぞれの専門分野の知識と技術を持ち寄って、患者さんにとってベストの治療を行います。

愛媛県中ハートチーム

よくあるご質問

Q1.
希望すれば経皮的僧帽弁クリップ術を受けることができますか?
A1.
ご希望だけでは、経皮的僧帽弁クリップ術を行うことはできません。
現在、僧帽弁閉鎖不全症の標準的治療は僧帽弁形成術や置換術などの外科手術ですが、手術リスクが高い患者さん(ご高齢の方、全身状態の悪い方、体力の低下を認める方など)がマイトラクリップの適応となります。
最終的な治療適応の判断は、当院のハートチームで行います。
Q2.
経皮的僧帽弁クリップ術を受けられない場合がありますか?
A2.
解剖学的にMitraClipが適応とならない方、経食道エコーが困難な方、極めて心機能の悪い方、並存する他の病気のため余命が長くないと考えられる方などは、経皮的僧帽弁クリップ術を受けることができません。
Q3.
入院期間はどのくらいですか?
A3.
順調に経過した場合には、1週間以内に退院可能です。
ただし、リハビリや薬物調整のためにより長く入院期間が必要となることもあります。
Q4.
費用はどのくらいかかりますか?
A4.

2018年4月より経皮的僧帽弁クリップ術が健康保険の適応となりました。高額療養費制度をご利用の場合、更に負担を減らすことが可能です。

※70歳以上の方の上限額:2018年8月診療分から

適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと)
外来(個人ごと)
現役並み 年収 約1,160万円~
標報83万円以上/課税所得690万円以上
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収 約770万円~約1,160万円
標報53万円以上/課税所得380万円以上
167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収 約370万円~約770万円
標報28万円以上/課税所得145万円以上
80,100円+(医療費-267,000)×1%
一般 年収 156万円~約370万円
標報26万円以下/課税所得145万円未満
18,000円
〔年144,000円〕
57,600円
住民税非課税等 Ⅱ 住民税非課税世帯 8,000円 24,600円
Ⅰ 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
15,000円

※69歳以下の方の上限額:2018年8月診療分から

適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと)
年収 約1,160万円~
健保:標報83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収 約770万円~約1,160万円
健保:標報53万円~79万円以上
国保:旧ただし書き所得600万円~901万円
167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収 約370万円~約770万円
健保:標報28万円~50万円以上
国保:旧ただし書き所得210万円~600万円
80,100円+(医療費-267,000)×1%
~年収 約370万円
健保:標報26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
住民税非課税者 35,400円

入院時の食事負担や室料等自費分の費用は含みません。
高額療養費制度について、詳しくは厚生労働省のサイト(外部リンク)をご覧ください。

お問い合わせ先

循環器内科 川村 豪
患者さん個々の病状などに関するご相談は、まずはかかりつけ医とご相談頂く方がよい場合もございますので、予めご了承ください。

経皮的僧帽弁クリップ術について詳しく知りたい方は「僧帽弁閉鎖不全症治療(外部リンク)」もご覧ください。

弁膜症・心雑音外来について

増加する弁膜症疾患に対応するため、当科では毎日「弁膜症・心雑音外来」を行っております。
弁膜症診断・治療の経験豊富な専門医師が対応いたします。当院循環器内科のページをご覧ください。

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