小児がんの治療について(小児科)

治療研究への参加について

 小児がんを治すには、抗がん剤を含めた集学的治療が必要です。化学療法では、何種類もの効果のある薬を組み合わせて使って初めて治癒が可能になります。どの抗がん剤を、どのように組み合わせて、どのくらいの期間治療したらよいかは、世界中とりわけ欧米の小児がん患児が参加して行ってきた「比較治療研究」の積み重ねにより確立してきました。しかし、まだ完璧な治療法はなく、約10%から40%の小児がんの患児は再発します。こうした患児にはさらに治療の工夫が必要です。

  また抗がん剤にはそれぞれ特有の副作用があり、投与してまもなく起こる急性のものだけではなく、何年も経ってから影響が表面化する事もあります。そのため、できるだけ副作用が少なく、かつ将来にも障害を残さない治療法が求められます。より良い治療法を確立するためには今後も治療研究が必要なのです。

 治療研究には、「比較治療研究」という方法がよく行われます。これは今までに一番良いとされてきた治療法(標準的治療法)と新しく考えられた治療法とを比較し、さらによい治療法を生み出していく方法で、通常たくさんの患児にどちらかの治療法を無作為に割り付けして、その結果を集計してどちらの治療法がよかったかを科学的に評価する方法がとられます。この治療法をどちらに割り付けるかは、登録センタ-で無作為に決めます。

  愛媛県立中央病院でも一部の疾患を除いて、全国で行われている臨床研究グループに所属して、比較治療研究を取り入れています。欧米では、この比較治療研究の方が他のどの治療よりも良い成績であったと報告されています。どうぞより良い治療法を確立するために治療研究に御協力下さい。

 しかし、新しい治療法で治療したり、無作為割り付けを受けるのには不安が付き物です。この新しい治療研究に参加するかどうかは、まったく自由です。参加しない場合は、従来の治療法を行うことになります。また治療研究に参加した場合でも、気が進まなくなれば途中でやめることも自由です。その場合でもやめた人が不利益を被るようなことはありません。また、治療を行っていく間に得られた患児およびご家族の個人情報については、担当者以外のなにものにも漏らさないことを誓います。

トータルケア

トータルケア

 小児がんは、病気になった子どもの身体だけでなく、精神心理面、家族関係、学校幼稚園などの日常活動などに多くの影響を与えます。また小児がん患児だけでなく、両親や兄弟姉妹、祖父母を含めた家族に与える影響も大きく、小児がんの発症を機に周囲の全てのものに何らかの変化が起こると言っても過言ではありません。

 まず小児がんの診断がつき治療を開始する頃には、本人へどのように病気を説明するのか(病名告知)の問題があります。また兄弟姉妹を含めて家族メンバーそれぞれの日常生活の変化があり、それまで通っていた幼稚園や学校に関する問題も起きてきます。当院では、小学校・中学校の院内学級を併設していますので、入院治療中も勉強を続けることが可能です。また、治療が進み外来治療になると、元の学校への復学の問題、日常生活復帰における体力の問題などが出てきます。この様な際の心理的な面でのサポートに関しては臨床心理士が担当しますので遠慮なくお申し出ください。家が遠隔地の場合には、当院の敷地に近接してラファミリエが運営するファミリーハウスが利用できますので、病棟看護長にお申し出ください。

 以上のように小児がん治療が順調に進み治癒するとしても、院内の医師・看護師・薬剤師・院内学級教師・保育士・臨床心理士・ソーシャルワーカー・作業療法士や原籍校の教師・特殊教育支援教諭・スクールカウンセラーなど多職種チームが関わるトータルケアが必要です。

治療終了後の問題(長期フォローアップ)

 小児がんの治療成績の進歩は顕著で、小児がん経験者の70%以上が治癒し、多くが成人期を迎えるようになっています。その多くの方は既に病気の説明(病名告知)を受け、治療を受けた医療機関や親元を離れて進学、就職しています。しかしその中には何らかの健康上の問題を抱え、様々な心理・社会的問題で悩んでいる方も少なくないようです。 晩期合併症とは「長期生存例に残存している、疾患自体の影響および外科、放射線、化学療法による直接的、間接的な障害」をすべて含んでいます。小児がんの治療を受けていく際に、どの時期、どのような治療法かによって、生じやすい障害を知っておくことは大切です。また造血幹細胞移植の普及に伴い、これまでの治療によるものとは異なった晩期合併症の発現も予想されています。

 

主な晩期合併症

主な合併症

 小児がんの晩期合併症には、大きく生命に関わるものと生活やQOLに影響するものに分けることが可能です。心機能障害や肺線維症のように心不全や呼吸不全となったり、悪性度の高い二次がんのように万が一起きると生命に関わるものと不妊症や知能障害、てんかん等、日常生活のQOLに強く影響を及ぼすものがあります。また、最近注目されている肥満などは生活習慣病につながり、成人期のメタボリック症候群になると危険です。また、輸血後C型肝炎なども知らないまま放っておくと、肝硬変・肝癌に進展して生命にかかわる可能性があります。以上のように、一口に小児がんの晩期合併症といっても、程度の差と広範囲の内容があることを知っておくことが必要です。

 またこのような晩期合併症は、治療終了後すぐに現れるものだけではなく、治療後10年、20年、30年以上たってから問題になることも少なくないということです。合併症の累積割合は、軽度のものも重症のものも年を追って増加するということを知っておく必要があります。

 

長期フォローアップの目的と問題点

 長期フォローアップをする主な目的は、以下の通りです。

  • あらかじめ自分がどのような健康上のリスクを持っているかを自覚し、心身健康の自己管理を行う
  • もし晩期合併症が起きた場合でも、それを早期に発見し、早期に適切に対応することにより日常生活に影響しないようQOLを向上させる
  • リスクのある合併症が臨床的に問題にならないように、必要に応じて予防的な視点での健康教育を受ける

 将来の同じ病気の小児がん患児に対して、治療による晩期合併症をできる限り軽減できるように、将来の治療法を改良できるような情報を提供する可能性があるという点も重要です。

 長期フォローアップを考えていく上で避けて通れないものとして、小児から成人への「移行の問題」があります。小児がん経験者の自己管理能力を十分つけて、成人診療科にも大人として対応できるようになることは、長い人生を考えていく上で重要と考えられます。大人になろうとしている小児がん経験者に必要な医療的ケアの中には、技術的に小児医療の枠を超えたものがあることも考慮しながら、情報が途切れることなく医療機関にかかれるようになることが望まれます。

 

 小児がんについて、詳しい情報をお知りになりたい方は、がんの子どもを守る会ホームページをご覧ください。