頭頸部がん

治療方針

 原則的に頭頚部癌診療ガイドラインに沿った標準治療を行っています。

 内視鏡検査(ファイバースコープ、NBI内視鏡)、超音波検査、CTやMRI検査、PET-CTなどを用いて、病変の広がり、転移の有無を評価し、がんの進行度に応じて治療方針を決定します。進行頭頚部がんの治療は、治療後の機能障害、容貌の変化を伴う場合もあり、個人個人の価値観やニーズに応じて治療方針を決定しております。

頭頸部がんについて

頭頚部がんとは

 頭頸部がんの「頭頸部」とは、脳より下方で、鎖骨より上方の領域をさし、顔面頭部から頸部全体がここに含まれます。この範囲に含まれる耳、鼻、口、のど、首などの耳鼻咽喉科領域の部分にできるがんが頭頸部がんです。以下のような多数のがんの種類があります。

がんの種類

 

頭頚部がんの組織

 頭頚部に発生するがんの90%以上は扁平上皮がんという細胞からなります。 比較的まれな組織型としては、唾液腺を中心として粘表皮がんや腺様嚢胞がんの他、頭頚部に発生する悪性黒色腫といった特殊な組織型も存在します。

 

頭頚部がんのリスク

  • 飲酒暦
  • 喫煙暦
  • EBウイルス感染(上咽頭がん)
  • HPVウイルス感染(中咽頭がん)
  • 頭頚部の放射線照射歴

といったものが主にあげられます。

  特に、飲酒と喫煙は頭頚部がん全体の約80%に関与しているといわれており、多量の飲酒歴や喫煙歴がある方は注意が必要です。

 

頭頚部がんの症状

 前述のように様々ながんの種類があるため、がんができた部位に応じて症状は異なりますが、以下のような症状が継続して生じる可能性があります。

  • 口やのどの違和感や痛みがつづく
  • 口やのどからの出血
  • 飲み込みにくさ
  • 嗄声、息のしづらさ
  • 首のかたい腫れ

頭頸部がんの診断

検査から診断のながれ

検査から診断のながれ

 

組織学的診断

 がんの確定診断は、腫瘍組織を少量採取して顕微鏡検査を行って決定します。 可能であれば、内視鏡観察時に局所麻酔下に採取を行います(生検)。局所麻酔下に採取が難しい場合は、入院の上、全身麻酔下に採取を行うこともあります。 疾患によっては組織の採取が難しいものもあり、その場合、超音波ガイド下に注射針で腫瘍細胞を吸引して診断をつけることもあります(穿刺吸引細胞診)。

 

がんの進行度・病期

 内視鏡検査、超音波検査、CTやMRI検査、PET-CTなどの検査結果を総合的に検討し、病変の広がり、転移の有無を評価し、がんの進行度を判断します。

頭頸部がんの治療

 頭頚部がんの治療は大きく分けて以下の選択肢があります。

  • 手術
  • 放射線治療
  • 抗がん剤治療

 頭頸部は食事、会話、呼吸といった生活に重要な組織があり、手術によりこれらの機能が障害されることがあります。小さな腫瘍で切除範囲が小さければ障害は軽度ですが、進行がんの手術では広い範囲の切除が必要となり大きな障害をきたすことがあります。その場合、腫瘍切除によって生じた欠損部を修復する必要があります。具体的には体のほかの部分から皮膚や筋肉、骨などの組織を移植する再建手術を行います。

 また、頭頚部がんの転移部位として最も重要なのが頸部のリンパ節であり、その制御ががんの治癒率に大きくかかわります。それに対しては頸部郭清術といい、頸部のリンパ節を系統的に切除する手術を行います。

 頭頸部がんの多く(扁平上皮がん)は放射線感受性が良好なため、放射線治療は早期のがんに対して根治を目的に行われます。ただし、進行がんの場合は、放射線療法単独では治癒率が低下するため、抗がん剤を併用して治療を行うことがあります。これを化学放射線療法と呼びます。しかしながら化学放射線療法は強い副作用が予想されることから、高齢の方には適応外となることがあります。その場合は放射線単独での治療を検討します。頭頸部がんに使用できる抗がん剤は、後述のようにいくつかの種類がありますが、最も汎用されている薬剤はシスプラチンという抗がん剤です。化学放射線療法には、口内炎・のどの粘膜炎や首の皮膚炎、シスプラチンによる悪心・嘔吐、腎機能障害や骨髄抑制による感染といった副作用が起きる可能性があります。治療経過中に口から食事がとれなくなることが予想されるため、通常治療前に胃瘻の造設を推奨しています。当院では抗がん剤の効果を上げるため、腫瘍を栄養する血管にカテーテルを留置し、経動脈的に抗がん剤を投与する動注化学療法も行っています。また近年、頭頸部がんに対して認可された分子標的薬であるセツキシマブについても、適応に応じて治療に取り入れています。

 

手術治療の例

手術治療の例

 

化学療法の例

化学療法の例

 

発生部位別の主な根治治療の選択肢(概要)

根治治療の選択肢

 

根治治療の選択法(概要)

根治治療の選択法

 頭頸部がんに対する根治治療としては、大きくわけて手術もしくは化学放射線療法/放射線療法がありますが、どちらを選択するかは根治性、治療後の機能、年齢や臓器機能などを踏まえて総合的に判断します。進行度に応じてそれらを組み合わせた治療を行うこともあります。

 ただし、口腔がんや、非扁平上皮がんである唾液腺がんや甲状腺がんは、放射線感受性が低いことから通常手術治療が第一選択となります。また、上咽頭がんは、解剖学的に外科的切除が困難な場所であることから、化学放射線治療が行われます。

 遠隔転移がある場合や、治療後に再発転移を来した場合、全身状態・臓器機能が不良な場合は、根治治療の適応とならないことがあります。その際、化学療法や分子標的治療、緩和治療といった治療を考えます。